家づくりの知識

マンションリフォームの基礎知識を解説!できる・できない・注意点

いま、マンションリフォームが注目されている理由

近年、通勤や買い物、通院に便利な「マンション」が注目を集めています。
背景には、共働き世帯の増加や、子ども世帯との別居といった現代的なライフスタイルの変化があります。

新築マンションの価格高騰や、人気エリアでの供給不足が進むなかで、
「中古マンションをリフォームして住む」という選択肢に関心が高まっています。

リフォームは、予算に合わせて自分たちらしい間取りやデザインを実現できる点が支持されており、
“新築に代わる住まいづくり”として選ばれるケースが増えています。

“直す”から“再設計する”へ

マンションリフォームは、単に古くなった設備を交換する「修繕」ではありません。
壁紙や床の張り替えといった表面的なリニューアルにとどまらず、間取り・収納・デザイン・機能などを総合的に見直し、住まい全体を再設計します。

家族構成やライフスタイルに合わせた間取り、収納の最適化、照明や素材による空間演出など、暮らしの質を高める工夫を取り入れることで、マンションは大きく生まれ変わります。

ただし、マンションには構造や管理規約などによる制限があります。
これらを理解せずに工事を進めると、トラブルにつながることもあります。
ここからは、マンションリフォームを行う際に押さえておきたい代表的な「3つの制限」について見ていきましょう。

1.管理規約(使用細則)による制限

マンションには、建物全体を安全かつ快適に維持するための「管理規約」と、それを補足する「使用細則」が定められていることが一般的です。
これらはリフォーム工事を行う際に必ず確認しておくべき重要なルールです。

床の遮音性能

マンションでは、下階への生活音を防ぐために床の遮音性能が定められています。
多くの管理規約で「LL-45」または「LL-40」以上の遮音等級が必要とされています。
床材を変更する場合は、遮音性能を確認し、メーカーの証明書を添付して申請するのが望ましいです。

工事申請と承認の手続き

多くのマンションでは、工事に先立って管理組合への「工事申請」が必要です。
申請期限も定められており、「着工の〇日前までに提出」とされていることが多いので注意しましょう。

一般的に、次のような書類の提出が求められます。

  • 工事申請書(発注者の署名・押印が必要)
  • 工事図面・仕様書
  • 工程表
  • 使用建材の資料やカタログ
  • 工事のお知らせ(掲示用)
  • 隣接同意書(※事前説明が必要な場合あり)

これらの書類は通常、施工会社が作成しますが、最終的な申請者は区分所有者本人です。
管理組合の承認を得て、初めて着工できます。

工事のルール

管理規約やローカルルールでは、一般的に次のように定められています。

  • 作業時間:平日9:00~17:00
  • 日曜・祝日の作業禁止(土曜禁止の物件もあり)
  • エレベーターや廊下の養生
  • 工事車両の駐停車位置の指定

近年は在宅勤務者が増えているため、「音や振動への配慮」を求める声も増加しています。
工期には余裕を持ち、近隣への告知・挨拶をしっかり行うことが大切です。

2.構造と間取り変更の制限

マンションは、「専有部分」と「共用部分」に分かれています。
一般的に「専有部分」は工事ができ、「共用部分」は工事できません。
ただし、どこまでが専有部分に含まれるかは管理規約によって異なるため、必ず確認が必要です。

専有部分(工事ができる範囲)

  • 内装下地(天井・壁・床のうちコンクリートを除く部分)
  • 壁紙・床材・室内ドア・収納・玄関ドア内側
  • キッチン・浴室・洗面台・トイレなどの設備機器
  • 照明・スイッチ・コンセント・分電盤
  • 外窓ガラス・網戸(色指定がある場合あり)
  • 内窓(二重サッシ)の新設

共用部分(工事ができない範囲)

  • コンクリート構造体(柱・梁・床・壁など)
  • 玄関ドア外側・外窓サッシ
  • 上下階にわたる給排水管・ガス管・電線・ダクト
  • 共用設備(オートロック・消防設備など)
  • バルコニー・窓格子・外壁

3.水道・ガス・電気の制限

キッチンやトイレなど住宅設備を変更する際には、水道・電気・ガスといったインフラ設備に関する制約もあります。

水道(給排水)の制限

給水・給湯管は適切な経路を確保し、排水には十分な勾配を取ることが重要です。
これらの条件によって、設備をどこまで移設できるかが決まります。
条件が厳しい場合でも、天井や壁内に配管を通す、または床下に二重床を設けることで、移設が可能になるケースもあります。

電気(配線・容量)の制限

多くのマンションでは、専有部分で契約できるアンペア数に上限があります。
IHクッキングヒーターや浴室乾燥機、食洗機など電力を多く使う設備を導入すると、容量オーバーでブレーカーが落ちることもあります。
リフォーム前に電気容量や増設の可否を確認しておくことが大切です。

ガスの制限

マンションでは、専有部分で使用できるガスの容量や配管を増設することが難しい場合があります。
そのため、給湯器の号数を上げたり、ガス乾燥機を新設したりするのが困難なケースもあります。
また、これらの設置に伴い排気のために外壁に開口を設ける必要がありますが、外壁は共用部分にあたるため、管理組合の許可が下りないことが多い点にも注意が必要です。

マンションで人気のリフォーム

キッチン:使いやすさとデザインの両立

対面式キッチンやアイランド型への変更が人気です。
最近は「掃除しやすい」「収納しやすい」といった機能性重視の設備も多く、毎日の家事がぐっと楽になります。

バスルーム:清掃性と快適性の進化

最新のシステムバスは棚やカバーが脱着できるタイプが増えています。
断熱浴槽や乾燥暖房機能など、省エネ性と清掃性を兼ね備えたモデルが主流です。
浴槽を大きくできる「サイズアップバス」も人気があります。

リビング:広々とした開放感を演出

隣接する部屋とLDKを一体化するプランが好評です。
家族のコミュニケーションが増え、採光性や開放感もアップします。

収納:生活動線に合わせた造作

「見せる収納」と「隠す収納」をバランスよく組み合わせることで、インテリアを損なわず、機能的な空間をつくることができます。

資産価値の向上という視点

リフォームは「快適に住むため」だけでなく、資産価値の維持・向上にもつながります。
古い内装や設備のままでは売却時の評価が下がることもありますが、
適切に手入れされた住まいは購入希望者からの印象も良く、将来的なリセールにも有利です。

「将来的に売却して住み替えるかもしれない」とお考えの方も、リフォームを検討する価値があります。

まとめ:暮らしに合わせて住まいを再設計する

リフォーム・リノベーションは、単に古い部分を直す工事ではなく、「これからの暮らし方」をデザインすることです。
家族構成の変化、在宅勤務の増加、趣味や時間の過ごし方など、ライフスタイルに合わせて空間を再設計することで、住まいをもっと好きになれるはずです。

リフォームの第一歩は、「どんな暮らしがしたいか」を考えることから始まります。